これでわかる損益計算書の基本

会計監査する人

投資家、とくに中長期型の投資家は決算書や経済紙に掲載されているファンダ情報を読み解けないと、かなり苦しい展開になってしまいます。とはいっても、すべてを読み解く必要はありません。まずは会社の一定期間の経営成績を示す損益計算書を簡単に見ていきましょう。

損益計算書はファンダメンタルズと定量分析の代表格

損益計算書の例(単位百万円)
科目 金額
売上高 1,000
売上原価 700
売上総利益 300
販管費 150
営業利益 150
営業外収益 10
営業外費用 20
経常利益 140
特別利益 10
特別損失 20
税引前当期純利益 130
法人税等 30
当期純利益 100

売上原価

たとえば、ある起業家が株式で資金を調達してカフェを開店したとします。このとき、商品の仕入れ原価や商品の製造にかかった費用を売上原価といいます。カフェでいうと仕入れた原材料があてはまります。

売上原価は業種によっては製造原価や工事原価と呼ばれ、企業経営にかかる費用の中でも中心を占めるものです。

そのような売上原価を、売上高から引くと売上総利益(粗利)がもとめられます。ということは、もし売上が増えている割に粗利が増えていないと銘柄を発見したら、その企業は利益率の低い仕事をとっている可能性が考えられるわけです。

販管費

売上原価のほかにカフェ経営にかかる費用としては人件費や店舗の賃料、水道光熱費、広告宣伝費、通信費などがあげられます。このように企業の営業活動にかかる費用を販売費及び一般管理費(=販管費)といいます。

これでわかる損益計算書の基本

 

人件費は非製造業では販管費に仕訳けられるが
製造業では売上原価に仕訳けられる。

営業利益

そして売上総利益から販管費を引くと営業利益が出ます。営業利益は企業が本業で稼ぎだした利益を意味します。業種によって利益率の目安は異なりますが、一般に企業の良し悪しを判断する際にはまず売上と営業利益の伸び率を見ることが多いです。

しかし、売上が増えていない割に営業利益が伸びている企業は、成長したというよりも販管費の削減によって利益を増やしたか、利益率の高い仕事を請け負うことができたということがいえます。

これでわかる損益計算書の基本

 

「〇〇の割に〇〇は多い・少ない」という分析は
ビジネスや投資では重要な考え方だよ。

営業外収益と営業外費用

カフェに限らず一般に企業経営ではお金の貸し借りや有価証券の売買・配当など金融に関する支出と収入が発生します。具体的に営業外収益としては受取利息や有価証券売却益などが、営業外費用としては支払利息や有価証券売却損などがあります。

ちなみに小売業(飲食業は小売業の一種)の悲しい宿命ともいえる万引きや廃棄にかかる費用は営業外費用、あるいは販管費に仕訳けられます。

経常利益

営業利益に営業外収益を足して営業外費用を引くと経常利益が導けます。経常収益は金融面も含めた企業経営の利益を意味しますので、非金融系企業の損益計算書の中で営業利益よりも経常利益が多かったら、その企業は本業以外でも稼いでいることになります。

一方、金融機関や、非金融機関の中でも投資業務にも力を入れている企業(不動産関連企業や総合商社など)を分析する際には経常利益の伸びを見ることが多いです。

特別利益と特別支出

企業経営では販管費や営業利益のように恒常的にかかる費用・収入もあれば、一時的なものに止まる費用・収益もあります。

具体的には、災害により発生した費用や不動産売却益などです。これらは特別利益、特別損失と呼ばれ、一時的・単発的な性質があります。したがって、特別利益や特別損失の大きさはさほど重視されません。経常利益に特別利益を足して、さらに特別損失を引くと税引き前利益がもとめられます。

これでわかる損益計算書の基本

 

投資では「事故は買い事件は売り」という格言があるよ。
要するに意図的に犯した事件はダメで突発的な事故は
大丈夫ってことだけど本当かな?

当期純利益と配当金

税引き前利益から法人税と住民税及び事業税を引くと当期純利益が出ます。企業が配当を出す場合、当期純利益から引き出します。配当の源泉は当期純利益という企業利益の最終段階なのです。

ただし、株式会社の純利益はすべて配当にまわされることはありません。純利益は翌年以降の設備投資や不況への備えとしても使われるものだからです。これは俗に内部留保と呼ばれます。

要するに株式会社の純利益は株主の配当に費やされる部分と、それ以降の経営にまわされる部分にわかれると覚えておくとよいと思います。とくに成長著しい企業やそれまでの経営が苦しかった企業だと、多少の純利益が出ていても無配(配当なし)とされ、経営の安定やさらなる成長に資金がまわされやすいです。

投資家のジレンマ

ここまでファンダメンタルズの基本である損益計算書の基本を見てきました。ここで重要なのは従業員にとってよい企業と投資家にとってよい企業は異なるということです。

一般に企業の従業員にとってよい企業とは賃金と雇用と労働環境と知名度が高い水準で安定している企業でしょう。

一方、投資家にとってよい企業とは株価を上げたり高い配当を出してくれる企業です。したがって、投資家は企業の利益が減ってしまう要因に敏感であり、とくに投資先の企業が賃金(販管費の一部)を上げることに否定的です。

しかし、企業が従業員の教育費用や賃金を削ると、それはそれで優れた人材が育たず長期的には利益にならないという批判もあります。高度な能力をもつ人材を必要とする企業の場合では高賃金は受け入れられるかもしれませんが、そうではない企業や部門の場合、株主からの要求もあって賃金は低めにおさえられやすいというわけです。

現代では労働者兼投資家という人も少なくありませんから、彼らは自分の賃金は上げてもらいたい一方で投資先の人件費は下げてもらいたいというジレンマにいることになります。

参考:株主の傾向とそれに対応する株式会社
株主の傾向⇒ 株主のその傾向は企業に
いかなる影響を及ぼすか
株価の下落を嫌う
(空売りは機関投資家の方が積極的)
四半期決算に追われる
視点が短期的であり企業のコスト増大に批判的 教育費用や設備投資、賃金などを削りうる
IRを中心に株価の刺激材料を先取りしようとする IR担当や広報戦略が重要になってくる
インサイダー取引や不祥事を嫌う 内部統制に力を入れる
赤字の企業に投資しない方がよいか

なお赤字の企業に対する投資は基本的に避けるのが正攻法ですが、黒字化すると一転して大きな株価上昇が見込めます。

これでわかる損益計算書の基本

 

赤字企業は人件費をおさえやすいものだけど
赤字の新興バイオは人件費を易々と減らせないみたい。

また、たとえば赤字のバイオ系企業においては発明・申請や治験結果に優れた成果が出ると大きく株価は上昇しますが、期待外れだと株価は大きく下がりやすいように、赤字企業に対する投資はギャンブル性が強いといえます。

次ページからは損益計算書の知識を生かして決算の基本を見ていきます。こちらもファンダの基本です。

当サイトを入門書として使う場合に次に読むべき記事⇒これでわかる決算に際して投資家が備えるべき基本


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