信用取引の基本は現物派も知っておく必要がある

現物取引では買ってから売る

株式投資ではたとえば1000円の銘柄100株を手持ちの資金10万円で買って、ある程度価格が動いたときに売るというパターンが基本です。つまり、自分のお金で株式を買ってから売るわけです。これを現物取引といいます。

しかし、現物取引とは対照的に証券会社からお金や株式を借りるなどして自分の手持ち資金以上の売買をすることもできます。これを信用取引といいます。

現物派も信用取引の基本を知っておくべき

ここで重要なのは、信用取引の動向は株式市場に結構な影響を及ぼすため現物派の人も信用取引の基本を知っておいた方がよいということです。ついでにいうと信用取引の基礎知識はFXや不動産投資にも役立ちます。信用取引の基本は以下のとおりです。

  1. 空売りができる
  2. 空売りが過熱したときの措置
  3. 担保とともに投資余力が増える
  4. 手数料に加えて金利・貸株料がかかる
  5. 利益も損失も大きくなりやすい
  6. 信用取引を始めるには審査に通過しなければならない
  7. 追証の存在
  8. 差金決済も可能
  9. 信用残と株価
  10. 増担保規制
  11. 配当・優待・議決権といった株主の権利には注意が必要
  12. どちらかというと短期投資に向いている
  13. 資金管理が重要

それでは順番に見ていきましょう。なお信用取引の一番の特徴である1の空売りについては2の措置とともに別ページに記してあります。

3-4.金利や担保とともに投資余力が増える

そもそも信用取引とは証券会社から株式やお金を借りて行う取引を意味します。そうなると当然、証券会社としては借り手である信用取引を行う投資家に金利の負担や担保を求めます。信用取引における担保とは株式や現金です。このときの現金を保証金といいます。

信用取引を行う投資家は、最大で証券会社に預けた保証金の約3.3倍までの取引ができます。これによって利益の可能性も損失の可能性も現物取引のときより大きくなります。

信用取引の基本は現物派も知っておく必要がある

 

最低保証金は30万円という証券会社が多いよ。

5.利益も損失も大きくなりやすい

たとえば現物取引では、50万円で買った銘柄の株価が10%上昇し55万円になったときに売るとキャピタルゲインは5万円です。

一方、信用取引では50万円の証拠金を使って2倍のレバレッジをかけた場合、100万円分の取引ができるようになります。このとき買い建てた銘柄の株価が10%上昇したときに売ると、キャピタルゲインは100万円の10%である10万円になるのです。元手は同じ金額にもかかわらず利益は2倍になるわけです。

かたや現物取引で、50万円で買った銘柄の株価が半分になった場合、損失も残り資産も25万円になります。ここで今度は信用取引として50万円に3倍のレバレッジをかけて150万円分の株式を買い建てたとします。それが同じく半分に下がった場合、75万円の損失が発生します。それを当初の資金50万円から差し引くと負債が25万円になってしまうのです。

6.信用取引の開始するには審査がある

信用取引の損失はときに元本・資産ゼロどころかマイナス圏に達してしまうのですから、信用取引を始めるには審査に通る必要があるのも当然だといえます。

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信用取引の審査では年齢・経験・資産状態の他に
基本的な理解度について電話で問われる場合があるよ。

7.追証の存在

信用取引を行う投資家は証券会社に担保となる保証金や株式を預けています。このとき投資家は証券会社ごとに定められた最低保証金維持率を気にする必要があります。なぜなら自身の建玉について一定の割合で含み損を出したり担保価値が下がると、追加証拠金(通称:追証)を入金するか、その建玉を決済する必要があるからです。

それを投資家自身が行わないと、証券会社によって建玉を決済されたり代用有価証券(担保に入れてあった株式)を売却されたりします。

信用取引の基本は現物派も知っておく必要がある

 

証券会社からお金や株式を借りるから
義務や強制力が生じるわけだ。

ここで保証金維持率に関する例をあげます。わかりやすくするために手数料と金利は計算式に入れず、さらに保証金を現金のみとします。

たとえば保証金150万円で300万円の建玉をもったとします。ここで300万円の建玉が290万円まで値下がりして10万円の評価損が出たとします。このときの保証金維持率は、(150万円−10万円)÷300万円×100で約47%です。つまり

保証金維持率=(保証金−建玉評価損)÷建玉総額×100

という計算式になります。ちなみに保証金100万円で300万円の建玉をもったときに10万円の評価損が出ると、保証金維持率は30%です。

保証金と建玉の間の倍率が大きいときほど(最大で約3.3倍)含み損を抱えたときの保証金維持率が危うくなるわけです。

また、このとき「信用二階建て」といって買い建てた銘柄と代用有価証券の銘柄を同じにすると損失の可能性も利益の可能性もより大きくなります。一般に証券会社の最低保証金維持率は20%から30%ほどですから追証の目安がなんとなく見えてきたでしょうか。

8.差金決済が可能

追証を知ると信用取引が怖くなるかもしれませんが、信用取引では現物取引で禁じられている差金決済が可能です。たとえば今あなたが証券会社の口座に8万円をもっているとします。この資金をもって株価800円のF社株を現物で100株だけ買うとします。

そしてこの株を株価の変動がないまま売るとします。ここで、それを売った当日ではその売却で得た8万円を使って再びF社株を買おうとしても買うことができないのです。これが差金決済の禁止です。

ただし、売却で得た8万円とは別にF社株を買うことができる資金を用意できれば、売却の当日中に再びF社株を買うことができます。このちょっとややこしい差金決済は信用取引では禁止されていません。信用取引では回転売買といって1日に何度も同じ銘柄を売買できるのです。

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追証は不自由な要素だけど
空売りや差金決済ができる点は自由度向上だね!

9.信用残と株価

信用取引では株式を買い建てとしても、金利がかかったり追証に迫られたりするため、現物取引よりも短期の売買になりやすいです。現物取引ではずっと持ってくおく選択肢がとりやすいわけです。

そのため信用買いが明らかに多い銘柄では買いの反対決済、つまり売りが近いうちに多めに出ると予想されるのです。もちろん、空売りが多い銘柄では近いうちに買い戻しが多めに出ると予想できます(そもそも空売り自体できない銘柄もあります)。

この信用取引の残量に関するデータには相場の行方や過熱具合の把握といった重要な性質が含まれているので、東証や日証金から定期的に集計が発表されます。それが東証の信用買い残・日証金の融資残と東証の信用売り残・日証金の貸株残です。

信用取引の基本は現物派も知っておく必要がある

 

現物派も信用残に注意しよう。

買い残・融資残とは信用取引で買い付けた株が決済(この場合は売り)されずに残っている数量のことです。売り残・貸株残はその逆です。空売りができる銘柄を貸借銘柄といい、一般に貸借銘柄では買い残が売り残を上回る傾向があります。

ここで買い残・融資残が売り残・貸株残を大きく上回っているとすれば、投資家の多くはその銘柄が上がると予想・期待しているといえます。

しかし、信用取引では金利や追証、期日などに迫られる中で反対売買(買った銘柄を売る、あるいは売った銘柄を買い戻す)をしなければならないので、買い残・融資残が多い銘柄は短期的には売り圧力となります。逆に売り残・貸株残が多いと、売り予想が多いものの、短期的には買い圧力となるわけです。

信用残をめぐる思惑・攻防

実際、業績がよい銘柄で売り残・貸株残が多いことは買い方にとって有利です(業績が明らかに悪い銘柄では売り残・貸株残が多いのが普通)。

しかし、大量の売り残・貸株残の中に有力な機関投資家が含まれていると、彼らは下で買い戻したいと考えているので強い売り圧を仕掛けてくる場合があります。大量の売り残が踏み上げ材料ではなく、むしろ売り圧として機能してしまうというわけです。

以上に関するデータは日証金日本取引所グループの空売り残高情報、そしてネット証券各社のログイン先にあるデータなどが参考になります。ただし、この類の情報は常に更新されるわけではないので実際の状態と差があります。また機関投資家は両建て(信用取引で買いと売り両方のポジションをもつこと)したりするので注意が必要です。

信用取引の基本は現物派も知っておく必要がある

 

空売りできない銘柄は新興市場に多く
株価の上下が比較的激しいよ!

10.増担保規制

さて信用取引に関して取引所や証券会社は、相場の過熱をおさえるために増担保規制(ましたんぽきせい、略して「ましたん」)という措置を発動する場合があります。これは信用取引の担保が平時よりも引き上げられることを意味します。規制発動前の建玉については規制対象外です。

増担保規制は信用取引をしづらくする措置なので、規制後は対象銘柄の出来高が下がりやすいです。規制後の株価の行方については何とも言い難く上下どちらの可能性も大いにあります。増担保規制によって出来高が減る可能性は高いとはいっても株価の行方が何とも言えないとなると、早急に売る必要がない場合もあるでしょう。

11.配当・優待・議決権について

信用取引は便利なのですが配当・優待・議決権といった株主の権利には注意が必要です。投資家が信用取引によって建てた株式の所有者は証券会社だからです。

まず配当については買い建てて権利日を持ち越せば配当落調整金という形でもらうことができます。一方、売り建てて権利日を持ち越すと配当落調整金を支払わなければなりません。また、買い建てた場合には株主優待や議決権を受け取ることができません。

下落チャートにご用心

12-13.どちらかというと短期投資に向いている

以上のように信用取引では金利がかかり、さらに保証金維持率を気にする必要があります。つまり、信用取引では資金管理を現物取引よりもきちんと行う必要があるのです。たとえば追証が出る手前の価格で逆指値注文を出しておくことはその典型です。

また長期の信用取引は資金管理や金利の面で負担が大変かもしれませんが、短期の信用取引なら金利負担を安くおさえることができます。とくに松井証券と楽天証券とSBI証券は短期の信用取引向け(1日=日計り=返済期限は当日)のサービスとして格安の金利・貸株料を売りにしています。

さらに短期投資に徹していれば持ち越すリスクや塩漬けになるリスクを減らすことできます。それに、そもそも株価は上昇するときよりも下落するときの方が速いので、空売りは短期投資に向いています。

信用取引の基本は現物派も知っておく必要がある

 

信用取引は使い方次第では便利な手段になるよ!

まとめ

細かいことをいうと信用取引の知識はまだ続きがありますが基本はこんなところです。

空売りに関するルールは今後も変わるでしょうし、証券会社によって細かいところは異なります。細かい内容はご契約先の証券会社ごとにご確認いただければと思います。

※なお信用取引には「制度信用取引」と「一般信用取引」があります。制度信用取引は取引できる銘柄や返済期限などが取引所によって決められている信用取引です。一方、一般信用取引は投資家と証券会社の間でルールを自由に定めることができる取引です。


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