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素材を応用した料理

マクロとミクロの視点

さて、経済学には二大分野としてマクロとミクロという分野があります。この考え方を知ると株式投資にも役立つはずです。

そもそもマクロとは巨視的(全体的に見る)という意味で、ミクロとは微視的(小さい個別の視点から見る)という意味です。すなわちマクロ経済学とは、国民所得や失業率、財政政策、金融政策など国家単位で見た経済学を意味します。

一方、ミクロ経済学とは、生産者や消費者など個別の経済主体から見た経済学です。ここでは個別主体にとっての合理的な経済行動や価格原理が強く意識されます。

ミクロとマクロを、たとえば半導体産業にあてはめると次のようになります。
日本の市況 世界の市況 将来という時間軸
ミクロ 半導体の個別銘柄 海外の半導体銘柄 半導体会社の参入・撤退・合併・提携
セミマクロ 半導体市況 ハイテク産業市況 フィラデルフィア半導体指数 ハイテク産業市況 半導体の景気循環 半導体の将来性
マクロ 国内の景気 日経平均株価 買い越しと売り越し 株以外の金融商品 日銀短観 貿易収支 金利 国内政治 世界の景気 海外市場の株価指数 資金の流入国 株以外の金融商品 IMFによる世界経済の見通し 為替(おもにドル円) 金利 国際政治 世界経済の未来 未来社会のあり方

半導体産業から経済を眺める

そもそも半導体とは、導体と絶縁体の中間的な物質のことです。パソコン、カメラ、自動車、電車、家電、ゲーム機など現代人が日常的に使っている機械には高い率で半導体が使われています。

そのため、半導体は現代の先進国経済では産業の米と呼ばれており、その需要や株価は機械産業やハイテク産業と連動しやすいです。また、これだけ産業のすそ野が広いと世界景気との連動性も指摘されるほどです。

この半導体産業は、基本材料をつくる企業、製造装置をつくる産業、半導体製品をつくる企業などにわけることができます。半導体産業は分業型の世界なのです。現代の日本企業は基本材料や製造装置をつくる面では健闘しており、輸出も盛んです。

半導体業界に見るミクロとセミマクロとマクロ、そして将来

上の表についていうと、ミクロは半導体の個別銘柄の動向で、マクロは半導体だけに止まらない市場全体の指標です。セミマクロとは、ミクロとマクロの間でチェックすべき、半導体産業の総合的な市況や半導体を組み込んだ製品に関する業種の市況を意味します。

その表を観察すると、半導体銘柄に投資するときにはセミマクロやマクロ、そして短期と長期にも気をつけた方がよいということが見えてくるのではないでしょうか。

たとえば、半導体のある個別銘柄についてテクニカル上では逆張りの買いシグナルが出たとしても、半導体市況が悪かったり将来が悲観されていると、短期では株価が少しリバウンドする局面があっても、中長期では停滞することもしばしばあるのです。

波動を早めにとらえる

ここで重要なのは半導体や素材系産業(鉄、土石、ゴム、石油、その他化学素材)は景気循環株と呼ばれ、周期的に好不況を繰り返しやすいということです。景気循環株は好況と不況の差が大きいのです。景気循環株は先行きが警戒されてPERが低めになる傾向があります。

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景気循環株ではPER1桁が珍しくない。

実際、日本の半導体関連の株価は2017年では好況でしたが、2018年では他のハイテク銘柄とともに芳しくないなど好不況には周期が見られるのです。

ただし、株価は将来性が重視されます。ということは、たとえば2019年後半に市況のピークを迎える銘柄は2019年後半に買っても遅く、もう少し前から仕込まないと大きな利益は得にくいでしょう。

循環物色

これと似たような発想で循環物色という手法もあります。

たとえば今年1月の株式市場ではIT産業が中心に物色されて、IT業種全体の平均株価は上がったとします。そこでIT業界に割高感が出てくると、2月にはIT銘柄が停滞して今度は1月に停滞していた別の産業が物色されてIT銘柄が下がるというように、そのときどきで有利な業種は変わります。

これを重視する投資家の中には月ごとに投資する業種を変える人もいれば、週ごとに投資する業種を変える人もいます。循環物色はスイングトレードでは割と有力なやり方です。

さらに日本の株式市場においては、1年の中で東証1部および大型株が強い時期もあれば、一方で中小・新興市場が強い時期もあるというように、時期によって大型株と中小・新興株との間で強弱が見られます。

具体的には大型株の決算(とくに好決算)が連発している時期は東証1部に資金が集まる傾向あります。一方、外国人や機関投資家が休暇に入る年末年始、さらに新興市場に話題性のある企業が上場するときでは個人投資家が好む中小・新興市場が盛り上がりを見せる傾向があります。

個別銘柄か経済全体か

またニュースや材料が現れたときには、それが個別銘柄に関するものか、それとも業種全体、はたまた日本経済全体などにまで及ぶものかを見極めることも重要です。2018年でいうと、アメリカと中国の間での貿易戦争の影響は日本株全体に強く及んでいます。

貿易戦争ですから日本株で悪影響を受けそうなのは輸出銘柄に限られそうなものですが、輸出銘柄の停滞・下落は日経平均株価を停滞させ、その停滞感は内需株にまで及んでいる部分もあります。

このように世界経済の二大市場であるアメリカ市場と中国市場で大きな動きがあると、日本株にも連鎖しやすいという点は覚えておくべきです。

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日本市場は敏感度が強いといわれている。
外国市場に左右されやすいということ。

資金の流入国

現代のグローバル経済では、将来の大きな成長を見込んで新興国に資金が多く流入している時期もあれば、先進国市場の手堅い業績を評価して先進国に資金流入が傾く時期もあります。その基本は、資金は成長している国・儲かりそうな市場へ流れることです。

先進国の企業の業績と株式市場が相対的に新興国のそれよりも悪いと見なされれば、新興国に資金が流れるのは、資本の流出入がある程度自由化されている現代では当たり前の現象です。

買い越しと売り越し

国家単位で資金の流入具合を見る際に一つの参考になるのは、東証全体の売買高の推移、そして買い越しと売り越しを見ることで多少は計れます。

買いが売りを上回れば買い越しで、売りが買いを上回れば売り越しです。買い越し・売り越しは、外国人、個人、機関、信用取引、現物取引といった区分けごとに毎週発表されます。

一般に外国人による売り越しが顕著だと日本市場は悲観的に見られている可能性が高く、日本人による買い意欲を削いできます。

それは押し目買いにとって好都合ともいえますが、日本企業の業績が悪くないのに売りが強いとすれば、国内政治が不安視されているからなのかもしれません。

株以外の金融商品市況

株式は数ある金融商品の中でもややリスクが高いです。それでもリスクをとる人がいるのは、そのリスクに見合うだけ儲かると考えている人がいるからです。

しかし、株式市場全体の状況が悪くなったら人々の資金は金(ゴールド)や預金など別の金融市場に向かうでしょう。もし金への投資の方が安全で儲かるなら、金投資に資金が流れるのは当然です。

実際、金の相場は長期的に安定しており、とくに世界経済のリスクが高まったときには価格が上昇しやすいといわれています。

以上のように、市場をマクロで見た場合に、株式市場から他の市場へ資金が流れていることや循環物色は「資金シフト」と呼ばれます。

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水は高いところから低いところへ流れる、
お金は儲かりそうな方へ流れるというのが原則だ。
ただし、危機的な状況では安全な方に流れやすい。

最後はシンプルに決断

株式投資では個別銘柄のファンダメンタルズとテクニカルだけでなく外部環境もさまざまな形で見る必要があります。株式投資は複雑なのです。しかし、そういった複雑さの中で最終的には買うか売るか、それとも様子見かというシンプルな選択がどんな投資家にも迫られます。

ファンダメンタルズもテクニカルも万全な指標などありません。すべてを満たしていつも伸びていく銘柄など存在せず、最終的にはどこか妥協しつつ気合を入れて売買するしかないのです。

しかし、それはギャンブルとは異なって投資は軌道修正が利くものですから、状況に応じて売買していただけたらと思います。

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