保有株を売るタイミングについて考えられるパターン

店番をするネコ

株式投資では買い注文が約定した瞬間の収支はプラスマイナスゼロです(手数料や税金、空売りの買い戻しは除く)。しかし、売りは同値撤退でない限り利益確定か損切りになるなど収支を決定づけます。ですから、売りは買いよりも重要であり、そして難しいのです。いくつかパターンがありますので参考にしていただければと思います。まずは利確としての売りからです。

1.利確としての売り

(1)頭と尻尾はくれてやれ

⇒最初に念頭に入れていただきたいのは次の格言に基づく行動です。その格言とは「頭と尻尾はくれてやれ」です。これは株式を魚・たい焼きに見立てて、頭と尻尾が天井と底値にそれぞれ対応した格言です。

たとえば、ある急騰銘柄の2週間の値動きにおいて安値が1601円で高値が2019円であるときに新規のスイングトレードで入る場合、理想は1601円で買って2019円で売ることです。しかし、現実にはその中間である1800円から1900円程度で値幅を取れたらそれで御の字だということです。

つまり、投資の理想は底値で買ってピッタリ天井で売ることですが、それはかなり難しいので両端の利益は捨てて真ん中の美味を得ようということです。これは買いの場合にも通じる格言です。いつも完璧などというのは天才的なトレーダーでさえも不可能ですし、また疲れるので多少の妥協はどうしても必要です。

(2)スイングでは早め、長期では遅めに売る

⇒「頭と尻尾はくれてやれ」からいえるのは株価の頂点で売るのは非常に難しいということです。したがって、スイングでは確実な利益を確保するために上昇トレンドの途中で売るイメージ、勝ち逃げするイメージで売ります。

一方、中長期投資ではできるだけ利益を伸ばすことが基本です。しかし、頂点で売るのはかなり難しいので頂点を少し過ぎたところが売り時かもしれません。

以上を山にたとえると、登り坂の途中で売るのがスイングで、下り坂の途中で売るのが中長期です。ただし、株価の山は独立峰もあれば連峰もあるので、とくに中長期では連峰を意識するとよいかもしれません。

また、地合いがよいときには普段よりも長く待つ、そうでないときには早い段階で売ってしまうというのも考えるべきでしょう。

2.利確・損切り共通の売り

(1)特定の増減率で売る

⇒次に利確と損切りに共通した売り手法を見ていきましょう。まずあげられるのは、たとえば買い値よりも増加率が10%に達したら売り、損失率が5%に達したら売りというように特定の割合で増減したときに売るという方法です。あらかじめ指値や逆指値を入れておくとよいでしょう。

なお、増減率の目安は買い値に対して設定するのではなく総資金に対して設定することも有力です。たとえば、損失率が5%以上に達している銘柄をもっているとしても、保有株数が少なく総資金に占める損失割合が低ければ、もう少し待つという戦略もありかもしれません。

(2)リセットした状態で見つめなおす

⇒たとえば、100万円で買った株が評価額90万円にまで下がったとします。10%の値下がりですから一つの損切りポイントといえるかもしれません。

ここで一つの有力な考え方は、下がったから売りを検討するのであって、もし自分がそれを保有しておらず、なおかつ余裕資金が90万円あったらそれを買うかということです。買うなら保有続行、買いたくないのなら損切りです。

つまり、自分をリセットしたような状態で含み損銘柄を見直すと、損切りか保有続行かが見えてくるというわけです。これは含み益状態のときでも使える考え方です。

(3)外部環境の明らかな悪化で売る―あらかじめ特定の事態を想定しておく

⇒天災やリーマンショックのような金融危機など外部環境がだれの目にも明らかに悪化したときにはさっさと売るべきかもしれません。

とくに日本では周期的に大きな天災が起きるものです。しかし、天災とはいっても規模や被災地、そしてその銘柄の地盤(主力の生産拠点や販売地)によって売るべきかは意見がわかれるものです。

保有株を売るタイミングについて考えられるパターン

 

下落が一度に大きくきた場合はビックリするので逃げやすい。
じわじわ下げられる方が判断に迷って逃げにくかったりする。

〇〇ショックと呼べるような経済危機であっても、震源地が新興国ならば狼狽する必要はないかもしれません。そこでそれらに関する条件を想定しておき売るか否かをあらかじめ決めておけば、天災や〇〇ショックが起きたときにも速やかに行動できるでしょう。

(4)特定のストーリーが終わったり崩れたときに売る

⇒特定のストーリーを軸とする方法もあります。たとえば企業から好材料が発表されて株価が上がってその熱が冷めかかったころに売る、あるいは企業から好材料が発表されると見込んで株を保有していたが発表されなかったので売るというパターンです。

具体的には、その会社に関連するイベント(ゲーム会社ならゲームショウやE3)に便乗する、配当の権利前を利用する(権利前は上がりやすいかも)といった形があります。

ゲーム会社は大規模なイベントに合わせてビッグニュースを発表することがありますから、それに合わせて株価が上がる場合があるのです。このときイベントが始まっても発表されなさそうであれば売りです。要するに、買ったときの材料がなくなったり弱まったら売りというわけです。

(5)業種の平均PERを目安にした売り

⇒それぞれの業種には目安となるPERがあります。そこでその業種の平均PERを下回っている銘柄を買ったら、その業種の平均PERの株価になるまで待ち、その付近に達したら売るということです。

むろん、保有し続けている間によい決算が出ればPERは下がりますし、逆に悪い決算が出るとPERは上がります。

ただし、以上はPERの妥当性が計りにくい新興株では難しいやり方です。

(6)テクニカル指標を目安にした売り

⇒移動平均乖離率、サイコロジカルライン、RSIなどテクニカル指標で売りシグナルが出たら売るという形です。場合によっては売りシグナルが出る前に売るのもよいでしょう。

ただし、売り一辺倒のシグナルが強く出ていたらわかりやすいとしても、売りシグナルが弱かったり買いシグナルと半々の割合で出現する場合もあります。こういう場合は地合いやファンダなどと見比べながら総合的に判断するしかありません。

保有株を売るタイミングについて考えられるパターン

 

売り戦略はあらかじめ考えておいたり
指値・逆指値を前もって入れておく方が有利か。

(7)迷ったら一部を売るも有力

⇒それでも売りに迷うことは多くあるでしょう。売りのタイミングは買いのタイミングよりも難しいとプロでさえいいますから個人にとっても難しいのは当然です。

そこで頻繁に用いられる手法が、迷ったら一部を売るというものです。たとえば、200株をもっていて売るのか迷ったら100株を売るという形です。

買う場合にしても、まずは100株買ってみて、よさげなら追加、悪ければすぐに売り、下がっても上がる見込みがあれば追加で買うというように、最初に買った少量の100株を起点にする方法は有力です。

3.損切りとしての売り
(1)減少率と回復に求められる増加率のズレ

⇒売りパターンの最後は損切りです。そもそも株式投資の基本は損小利大である以上、利確ラインの設定は少し曖昧でよいかもしれませんが、損失をおさえる損切りラインの設定はとても重要です。

ドローダウン(資産減少率) 原資回復に求められる増加率
−10% 11.1%
−20% 25%
−30% 42.8%
−40% 66.6%
−50% 100%
−60% 150%
−70% 233.3%
−80% 400%
−90% 900%

上の表のように100万円が70万円になったときの損失は30万円(−30%)ですが、その70万円を100万円に戻すには増加率が42.8%も必要ですから、損切りは重要なのです。

(2)塩漬けと機会損失

ここで登場するのが塩漬けという選択肢です。

株式投資にいう塩漬けとは、含み損状態の株を持ち続けることです。含み益状態の株は売らなければ利益確定にならないのと同じように、含み損状態の株も売らなければ損失確定にはなりません。

このように値下がりした株は将来的に上がる可能性もあるので、塩漬けが悪いとは限りません。しかし、それと同時に値下がりしたままだったり、さらに値下がりしてしまう可能性もあります。

株が塩漬けになってしまうということは、すぐに切り返す可能性もありますが、一般的にはその付近では調子の悪い株でしょう。それならば、調子の悪い株の復調を長々と待つよりは調子のよい銘柄に移ってその株で負けを取り戻す選択肢もあります。

塩漬け株の保有は保有株の復調を待つという一点に絞った狭い戦略ですが、それを損切りすれば、その売却資金を使ってそれ以外の3000以上もの銘柄を保有する機会がもてます。損切りはマイナス確定ではありますが、次なるプラスへの機会を切り開く前向きな行為でもあるわけです。この差は資産の運用効率面ではもちろん、投資に対する意欲の持ち方の違いとしても大きなものです。

このように相場では損失を上手く(早めに)切って生き残ってチャンスの銘柄を待つことが重要です。

損切りの難しさはサンクコストにあり

⇒そうはいっても一般に損切りは難しいといわれています。なぜなら、そこにはサンクコストという心理的な労力・費用が作用しているからです。サンクコストとは、経済学用語で回収できない費用を意味します。

たとえば、買った書籍が前半だけでつまらないとわかったら、その時点で読むのをやめるのが合理的ですが、選ぶのに手間暇をかけたりお金を支払っていると「もったいない、回収したい」という思いにとらわれて読み続けてしまうことがあてはまります。

株式投資でも買う銘柄について時間をかけて厳選していると思い入れが強すぎて損切りできないことがあります。しかし、もし回収できない見込みが高かったら、さっさと損切りする選択肢もありだというわけです。

保有株を売るタイミングについて考えられるパターン

 

サンクコストは公共事業でよくもちだされるよ。

人生においても、ときには今までこだわってきた道をあきらめて別の道を進んだ方がよいこともあるように、塩漬け以外の選択肢も常に頭に入れておきたいものです。

なおどうしても損切りボタンを押すことに抵抗があるという人は、あらかじめ損切ラインに逆指値注文を入れておけば、そこまで下がったときに高確率で(ストップ安などでは売れない)自動的に損切りできます。

次は売買両方の参考になる機関投資家の特徴についてです。

当サイトを入門書として使う場合に次に読むべき記事(章が変わります)⇒機関投資家の特徴を知って自らの投資に役立てよう


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